旧県立体育館の解体再開と、利活用検討の経緯・行政記録をめぐる質疑
2026年10月19日、香川県知事の定例記者会見で、旧香川県立体育館の解体工事再開をめぐる問題について、記者から複数の質問がありました。
池田豊人知事は、建物本体や支持杭の耐震性不足、老朽化による吊り屋根の落下リスクなどを理由に、解体工事を中断期間の終了後に再開したと説明しました。再生委員会側が実施した現地調査に基づく専門家の鑑定結果を待ってから解体の是非を判断することについては、工事の中断が安全上のリスクを長引かせるとして、慎重な姿勢を示しました。
一方、会見では、旧県立体育館の利活用を検討していた当時の庁内会議の記録をめぐる問題も取り上げられました。県は、2023年の情報公開請求時には見つからなかった文書が、その後、訴訟の中で提出されたことについて謝罪。また、利活用のあり方を検討する会議は開催されておらず、解体決定に至るまでの特定の会議や協議体についても、記録が残っていないと説明しました。
さらに、今後の解体工事については、支保工(工事中に建物などを支える仮設構造物)を含む施工方法を施工者が検討中であり、建物本体の解体着手時期は未定とされました。工期や追加予算への影響についても、施工方法の検討を踏まえて判断するとの説明がありました。
今回の会見では、解体を急ぐ県の安全上の判断に加え、耐震性に関する専門的な鑑定と工事の進行との関係、保存・利活用の検討過程を後から検証するための行政記録のあり方、そして解体工事そのものの安全性と工程が、改めて問われました。
「あり方検討会」は開催されていなかった――利活用の検討過程をめぐる県の説明
会見では、旧香川県立体育館の利活用を検討していた当時の庁内会議と、その後の意思決定の経緯についても質疑が行われました。
記者が取り上げたのは、2022年3月に開催された「サウンディング型市場調査連絡会」の議事メモです。この記録には、民間事業者からの提案を踏まえ、今後「あり方検討会」において検討していくことが了承された旨が記されていました。
しかし、2026年10月19日の記者会見で池田知事は、あり方検討会について「結局開かれなかった」と説明。さらに、それに類する特定の会議や協議体も開かれておらず、記録を遡って確認したものの、解体方針の決定に至る過程を示す会議・協議の記録は残っていないとの認識を示しました。
また、記者からは、2023年に行った情報公開請求では不存在とされた議事メモが、後に訴訟の中で提出されたことについても質問がありました。知事は、当時の請求で文書を見つけられなかったことについて謝罪し、今後、情報公開への対応をより適切に進める考えを述べました。
旧県立体育館の解体方針は、2023年2月に県が表明しています。今回の会見で問われたのは、解体という結論そのものだけでなく、民間による利活用の可能性がどのように検討され、どのような判断を経て解体方針に至ったのか、その過程を後から検証できる記録が残されているのかという点です。
公共建築の保存・活用をめぐる意思決定においては、判断の根拠と経緯を記録し、将来の県民が検証できる状態にしておくことも重要な課題です。
以下、香川県が公表した記者会見の内容を紹介します。
参考資料:
香川県 知事定例記者会見(令和8年10月19日(月曜日)午後1時から)《香川県》 - Youtube
【旧県立体育館について】
記者:旧県立体育館についてお伺いします。9月15日からの解体中断の1か月を終え、今月15日に解体工事が再開されました。お伺いしたいのは、知事にとってこの1か月というのは何だったのかというのを再開した理由も含めてお示しください。知事:順序が反対になるかもわかりませんがお答えをさせていただきます。旧県立体育館ですが、平成24年に吊り屋根の落下の危険性が判明したことで、アリーナ部分の利用が中止になり、その後、閉館をしたということでございます。その後、10年にわたって耐震改修をして利活用する、この方向を検討してまいりましたが、それが叶わずやむなく解体工事に着手をしたところでございます。この建物の課題としては、建物本体の耐震性の不足のみならず、支持杭の耐震性の不足、老朽化による吊り屋根の落下の危険性、そして外壁の経年劣化など、複数の安全上のリスクがある建物で、放置することができないという判断をしております。このため、この解体工事についての中断をするということについては、今、申し上げた10年以上にわたる議論を尽くして、やむなく下した判断につきまして、原告の主張に合わせて先送りをして、安全面のリスクを放置することになることなので、適切でないと考えているところです。裁判所からの提案を受けまして、解体工事については9月15日から10月14日まで中断をいたし、中断期間は延長しないということについて裁判所、原告、県の方の協議の中で取り決めがされたところ、この中での中断でありました。従いまして、取り決められた期間の後に工事を再開することについては、中断する時の前提となっていると考えているところでございます。
記者:今回、この中断期間中に原告側が費用負担して現地調査を行って、そのデータをもとに専門家による鑑定が今後行われる見通しなのですが、その結果が出るのを待たずに解体をもう始めてしまったということで、SNSなどでは例え話として、胃に腫瘍が見つかって、その良性、悪性を調べる検査を行ったのに、その結果が出る前にリスクをゼロにするために胃を全摘出してしまうというようなことではないかと。なぜ鑑定結果を待たないのだという意見もあります。この辺りはどう考えられているのか、もう一度お伺いしたいのですが。
知事:この旧県立体育館の建物は、耐震性、支持杭の耐震性不足、そして老朽化による吊り屋根落下の危険性など、放置ができない状態であると判断をしております。そういった判断の中で、やむなく今、解体工事を進めております。そういう状況において、原告の主張に合わせて先送りをして、心配される安全面のリスクを放置していくということが適切ではないという、そういう判断をしております。
記者:今回、裁判所から一時中断の提案というのか、要請というのか、受け取り方次第かと思うのですが、これを県としてはどう受け取られたのですか。
知事:裁判に対しては、裁判所の進行に協力するスタンスということで、ずっと対応しております。裁判所から原告側の調査の意向を受けての中断のお話がありましたので、裁判の進行に協力するスタンスの中で、今回中断の取り決めに参加をしたところでございます。
記者:知事はこれまでの会見でも、裁判の進行に協力するスタンスということをおっしゃられているのですが、今一つよくわからないのは、現地調査をするということは、当然その後に鑑定が行われるというのが前提だと思うのですが、そこには協力しないのですか。
知事:裁判所の進行においては、今回は原告がぜひ今の段階でのいろいろな調査をする意向があるということで、被告側の方で受け入れられるものなのかどうかという、そういう話がありましたので、三者で約1か月間の中断の取り決めがされたものかと考えております。
記者:県側が倒壊の危険があるという根拠にしている2012年の耐震診断を行ったTANGE建築都市設計の丹下憲孝代表の方も、この解体中断が決まった後、それから再開の前に2度にわたって声明を出されているのですが、これに対してはどのように考えられていますか。どう受け止めましたか。
知事:丹下様からの声明というのは、私も報道等でも見たところでございますが、丹下先生の今のお気持ちなのだろうということで受け止めたところでございます。
記者:お気持ちをどう受け止められたのですか。
知事:現時点において旧県立体育館は保存ができないものだろうかという強いお気持ちがあるのだなと受け止めました。
記者:この裁判の中では、この診断書をどう読み解くのかというのが一つ、原告側と被告側の食い違う争点になっていると思うのですが、丹下さんの事務所の方に県から問い合わせたりする考えはないのですか。
知事:今、おっしゃられましたように、訴訟の上で、そういったいろいろな診断結果についても主張がされております。これについては、係争中でございますので、コメントは控えさせていただきます。
記者:10年にわたって利活用できないかということを検討されてきたという話の流れの中で、裁判の中で、2022年3月に行った庁内のサウンディング型市場調査連絡会という会議の議事内容のメモを証拠提出されているのを、裁判所で閲覧の上、私が情報公開請求をして入手しました。この議事内容なのですが、2023年8月に私が同じ内容で情報公開請求した時には、不存在で非公開とされているのですね。県では、請求にかかる行政文書を作成および取得しておらず、当該文書が存在しないためという理由で非公開とされたものが、今回裁判の中で出てきたと。これはなぜなのですか。
知事:3年前に情報公開請求をいただいて、令和5年6月ですが、その際にこの文書が見つからなかったということでございます。そして、その時の不存在という回答になったことについては申し訳ないと考えております。
記者:これまでもいろいろな情報公開請求をしてきていますが、不存在というのはよくあります。これは後で探したら出てきましたということが起きるのであれば、何を信じたらいいのですか。
知事:3年前の公開請求の際に見つけることができなかったことについては、申し訳なく思っております。今後、より徹底して適切に対応していきたいと思います。
記者:今回出てきたこの連絡会の議事内容の中では、このサウンディング調査の結果について、改修まで全て民間に委ねることに無理があるのではないかとか、提案のうち1提案については、取り壊し費用の相当額を提案者に渡してくれればいいとの趣旨であり、単に県費負担を求めるのと意味合いが違うのではないかという意見が県庁内部からも出ています。そこからやむを得ず解体という結論に至るまでに、この会議の議事メモから結構飛躍があるのですよね。その間に何が起きたのか、どういう判断があったのかというところが焦点になってくるかと思うのですが、この議事メモでは今後あり方検討会において検討していくことについて、説明して了承いただいたのですが、このあり方検討会というのは、いつどのような形で行われたのですか。
知事:このあり方検討会というのは、調べてみましたら、結局開かれなかったと聞いております。
記者:なぜ開かなかったのですか。
知事:今、結果を振り返ってみて、開かれなかったという事実が確認されているということでございます。
記者:少なくともこの連絡会の時点から、もう民間による利活用の可能性がないと結論付けて、解体を判断するまでの間に、何らかの話し合いなり、意思決定の場があったというのが当然だと考えるのですが、そこが公文書として記録に残っていない。本当に残っていないのですか。
知事:このあり方検討会については開かれていない。そしてそれに類する特定の会議や協議体も開かれていないということを、今の時点で記録を遡って確認しております。記録は残っていないということでございます。
記者:実際、3年前に記録がないと言っていたものがあったのですよ。それも踏まえて、本当にないって信じろというのですか。
知事:この情報公開、しっかりと適切に対応していかなければいけないと思っております。そういった点で、3年前のご要望、請求に対して見つけられなかったことについては、本当に申し訳なく思います。今のご質問ですが、あり方検討会以外のものも含めて、協議体・会議体のものの開催の記録が残っていないというのが、今の状況でございます。
記者:逆に言うと、その記録を残していないというのは、例えば10年後、20年後に、なぜこの旧県立体育館が解体されたのかを県民が検証できないということになると思うのですね。そこを今からでも、関わった職員はいらっしゃると思うので、なぜ解体を決めたのかというところをちゃんと記録として残しておく必要があるのではないですか。
知事:行政のいろいろな記録というのは重要なことであると思います。これからも不断なく改善するように努めないといけないと思っておりますので、しっかりとこれからも改善、より適切に進めてまいりたいと思います。
記者:今からでも作る、なぜ解体を決めたのかというところ、すごく重要になってくると思うのですよ。
知事:記録ということが行政文書の意味合いですので、そういった原則に照らして進めてまいりたいと思います。
【旧県立体育館について】
記者:旧県立体育館の質問に関して、2点お尋ねしたいと思います。1点目なのですが、今、工事再開されている理由などは伺ったのですが、旧県立体育館自体はもう囲いの中に覆われていて、一般の方は入れない状況ではあるのですが、安全面のリスクは放置することができないということで工事再開されていますが、一般の方も近づけない状態でも再開するというのはどういうところが大きいのでしょうか。端からすると、もし吊り屋根が落ちても、一般の人の周りには影響はないような状態になっていると思うのですが。知事:工事を進めておりますので、これは今の旧県立体育館の老朽化をはじめとする状況から見て、ずるずる先延ばしはできない、放置はできない状況であると判断して、やむなく解体工事をしているという、そういう現状であります。なお、工事中の安全は一番大事ですので、確保していきたいと思います。
記者:数か月後に鑑定結果が出るということですが、今、解体工事自体が進んでいるわけで、鑑定結果が出る前に解体工事が終わったり、あるいは更地になったりするような可能性があったりするのですが、その辺りスケジュールとしてはどのように見込まれていますでしょうか。
知事:鑑定という話が、今、おっしゃられていますが、裁判の中で、裁判所が進行していく上でのことでございますので、私からはコメントは控えたいと思います。
記者:鑑定結果の内容によっては、工事の中断、もしくは中断の可能性というのは現時点であるのでしょうか。
知事:裁判所の行うものについては、先ほども申し上げた通り、コメントは控えさせていただきたいと思います。そして、この工事については、中断をすること自身が、非常に安全性のリスクのある建物の状況、これを長く先へ送るということになるので、中断するということは適切なことではないという考えでおります。
【2.旧県立体育館について】
記者:これから本体、躯体の解体に入るにあたって、専門家などから、かなり安全性についての懸念の声も上がっているのですが、この1か月中断の期間もあったわけですが、支えとなる支保工の強度が弱いのではないかという指摘もあったりする中で、解体工事の安全性に向けて、県の方で施工者側と何か話したりしていることはありますでしょうか。知事:安全には万全を期さないといけないということでありまして、現在、支保工を含む、どういう施工方法に最終的にしようかということは、施工者において今、検討を行っていただいております。まだ結論が出ていないという状況でございます。
記者:今後のスケジュールについてですが、ひとまず今、アスベストの除去を行うということですが、いつぐらいから躯体の解体に入るかみたいな見通しはありますか。
知事:支保工を含む解体の施工方法について、施工者の間で最終的な検討中で、まだそこがまとまっておりませんので、具体的、実質的な躯体の解体時期については、現時点では未定になっております。
記者:年内とか、そういうレベルでもまだ言えない感じですか。
知事:そうですね。今、施工方法の検討をしておりますので。
記者:となると、全体の工程のスケジュール、解体完了というところへの影響はどうでしょうか。
知事:現時点では当初の工期を目標にという状況で今、進めておりますが、そういった施工方法の見直し等を踏まえて、改めてその工期についても、今のままでいけるのかどうか、ここも一緒に結論を出していきたいと思います。
記者:追加の予算等についてはいかがでしょうか。
知事:施工方法によるところは大きいと思いますので、そういう中でまとめていきたいと思います。